遺言書が存在する場合の相続手続について

遺言者が、遺言で遺産分割の方法を指定する場合、または、遺産分割の方法を定めることを第三者に委託する場合です。

遺言者は、遺言によって法定相続分と異なる割合を指定し、または、その指定を第三者に委託することができます。
相続分を指定した場合には法定相続に優先します。

とすれば、遺言がある場合は遺産分割協議をする必要ないとも思われますが、遺言の内容によっては、遺産分割協議が必要になります。

◆手続きの流れ

相続人の調査

被相続人の出生にさかのぼるまでの戸籍を取得して、相続人を確定させます。

遺言書の開封、家庭裁判所での検認手続き

封印ある自筆証書遺言および秘密証書遺言は、家庭裁判所で開封する手続きをします。
さらに、自筆証書遺言および秘密証書遺言は、家庭裁判所において検認の手続きが必要となります。
これに対して、公正証書遺言は家庭裁判所における開封や検認の手続きは不要です。

遺言書の検認については、こちらをご参照ください。

資産、負債の調査

遺言書作成時から財産状況に変化がある場合がありますから、プラスとマイナスの財産を確認しましょう。

遺言の執行

遺言執行者が指定されている場合、遺言執行者が遺言を執行します。
詳しくはこちら

指定されていない場合、法定相続人全員が遺言によって指定された範囲で遺言を執行します。
遺産分割協議をする必要がある場合には、協議をして分割します。
 
遺留分が侵害されている場合の遺留分減殺請求権の行使
兄弟姉妹以外の相続人には遺留分が認められています。
したがって、遺留分が侵害された場合、1年以内に侵害した相手方に対して遺留分減殺請求権を行使することができます。
 
所得税等の申告・納税
所得税の確定申告をすべき人が死亡した場合、相続開始を知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに、確定申告をして納税しなければなりません。
消費税・地方消費税や市町村民税等の申告が必要であった方は、これらの申告もお忘れなく。
 
相続税の申告・納付
相続税を申告する必要がある場合、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に申告と納税をしなければなりません。

◆遺言がある場合に遺産分割協議が必要なケース

被相続人が遺言を残した場合、法定相続に優先します。
であれば、遺言がある場合は遺産分割協議をする必要はないとも思われますが、遺言がある場合でも遺言の内容によっては、遺産分割協議が必要になります。

遺言の内容が相続する割合のみを指定している場合 

たとえば、「妻と子2人に財産を3分の1ずつ相続させる。」という遺言を残す場合 この場合、遺産が現金のみであれば、簡単に3分の1ずつ分けることができます。
しかし、不動産や株式、預金などは、だれがどれだけを承継するのか具体的に決めなければ、分数的割合を決めただけでは、相続手続きをすすめることができません。
これを決めるために、遺産分割協議をすることが必要になります。

遺言の内容が一部財産の指定のみの場合  

たとえば、「妻に自宅不動産を相続させる。」とのみ、遺言を残す場合 この場合、指定されている遺産については、問題はないですが、指定されていない他の遺産はだれがどれだけを承継するのか具体的に決めなければ、相続手続きをすすめることができません。
これを決めるために、遺産分割協議をすることが必要になります。


◆遺言と異なる内容の遺産分割はできるのか?

遺言書にだれにどの財産を相続させるのか具体的に記載されているが、その内容と異なる内容の遺産分割をする場合 遺言の内容と異なる遺産分割協議をすることはできると考えられています。
遺産分割協議の内容に制限はありませんから、相続人の意思によって自由に遺産分割について定めることができると考えられているからです。
したがって、遺言による指定相続と一致しない遺産分割協議も各相続人の自由意思に基づく限りは有効となります。
ただし、遺言執行者がいる場合には、遺言執行者との間で争いになりかねませんので、遺言執行者の同意を得ておいた方がよいでしょう。