配偶者に財産を全部残したい


子供のいないご夫婦って多いですよね。
価値観の多様化から、子供を作らない選択肢も
ごく一般的です。

子育てに煩わされることがないため、
ご自身の、そしてご夫婦で時間を共有し、
趣味や仕事に、充実した時間を過ごされている
ご夫婦も。

・・・でも、子供のいないご夫婦に
ちょっと知っておいて欲しいことがあります。

縁起でもない話ですが、もしもご主人(奥様)に
万が一のことがあったら・・・。

「オレが死んだら財産は全部妻のものだよ!」

わかります!
気持ちはそうですよね。
でも法律的にはそう簡単にはいかないのです。

仮にご主人が亡くなったとします。
人の死亡により「相続(そうぞく)」が始まります。

相続の手続は複雑なのでここでは詳細を述べませんが、
子供のいないご夫婦の場合、
ご主人の財産を受け取る権利がある人は
奥様だけではないのです。

もちろん奥様は相続人としてご主人の財産を
相続する権利があります。
そしてもし子供がいれば奥様と子供がご主人の
全財産を相続して終わりです。

・・・が、もしも子供がいない場合には、
亡くなったご主人のご両親が生きていれば
ご両親も相続人に加わります。

ご両親がご主人よりも先にお亡くなりになっている
場合には、ご主人に兄弟姉妹がいればこれらの方が
相続人に加わります。
ご主人の兄弟姉妹が亡くなっている場合でも、
その子つまりご主人の甥や姪がいればその甥、姪たちが
ご主人の財産を受け取る権利を有します。

つまりどういうことか・・・

子供がいないと、ご主人側の親族がその優先順位に
従って、次々と相続人として名乗りを上げることに
なるのです。

残された奥様は、亡きご主人側の親族たちと
まさに「孤軍奮闘」で遺産分割協議をしなくては
ならないのです。
これは奥様にとってかなりシンドイです。

嫁としての立場から、ご主人の親族と対等に交渉し、
権利を主張することができずに決着してしまう場合が
とても多いのです。

ましてやご主人の生前から、いわゆる嫁と姑の関係が
あまり良くないような場合や、ご主人の兄弟とのお付き合い
希薄だったりした場合だともう最悪です。

「嫁のくせに」

「息子(ご主人)の財産はこちら側の
ものだから、アンタ(奥さん)にはあげないよ!」

「財産、財産って、そんなに息子(ご主人)の財産が
欲しいのかい!」

「あさましい嫁だねぇ・・・」

「もうこの話はこちら側でケリをつけるから、
息子(ご主人)もいなくなったことだし、アンタももううちの
敷居をまたがないで頂戴!」


信じられないかもしれませんが実際にこういう事例は
たくさんあるのです。

まさに「モンスター化した親族」。
「モンスターペアレンツ」なんていう言葉もあるくらい
ですから、あり得る話かなと思ってもらえるのでは
ないでしょうか。


ご主人という強い味方を失った奥様が、その後
ご主人の親族の強い抵抗にあい、本来もらえて当然の
財産まで諦めざるを得ないなんてことが本当に
本当にあるのです。

大切な奥様のために、ぜひご主人みずからが
お元気なうちにご自身の財産の行く先を決めておいて
欲しいと思います。


それには「遺言(ゆいごん)」を残しておくのが一番です。
遺言があれば、誰がなんと言おうと遺言の内容どおりに
財産が分割されます。

ご主人の残した家に奥様をずっと住まわせたいような
場合にも遺言はとても有効な方法ですし、
ご主人が奥様に全財産をあげたいと思えば、
そのように遺言を残せば実現するのです。

確かにご両親に対しては「遺留分」の問題も残りますが、
それでも全財産の6分の1です。残りの6分の5は、
遺言によって奥様にしっかりと確保されますし、
遺留分をもらうための請求には期限もあります。
期限を過ぎたら請求を受けても財産を分ける
必要すらありません。
(つまり全部奥様の手元に財産が残ります)

また兄弟姉妹には遺留分そのものがありませんので、
ご主人が遺言さえ残しておいてあげれば、
ご主人の兄弟姉妹から財産分与を求められても、
また不知に乗じて「遺留分をよこせ」などと言ってきても、
「あなたたちには遺留分は認められていませんし、
このとおり主人の遺言があるので、お義兄様たちに
さしあげる財産はありません!」と、
遺言を盾に突っぱねることも可能なのです。

子供のいないご夫婦であれば、自分の大切な奥様が
相続で悲しい思い、悔しい思いをしないよう、
そしてご主人の亡き後も奥様の最低限の生活が
保てるよう、ぜひ遺言を残して奥様の権利と財産を
守ってあげて欲しいと思います。