在日外国人の方の遺言作成

日本にいる外国人の方が遺言書を残したい場合、どの国の法律が適用されるのか(準拠法)を検討しなければなりません。

遺言書の作成方法(方式)と遺言での法律行為の内容、遺言の成立及び効力について、それぞれの準拠法を考える必要があります。

■1.遺言の作成方法(方式)
「遺言」の方式に関して必要な事項を定めている法律として、遺言の方式の準拠法に関する法律があります


この法律では「遺言」が、以下のいずれかの法律に適合していれば、方式に関して有効であると定められています。

①行為(「遺言」をした)地法
②「遺言者」が「遺言」の成立または死亡の当時、国籍を有した国の法
③「遺言者」が「遺言」の成立または死亡の当時、住所を有した地の法
④「遺言者」が「遺言」の成立または死亡の当時、常居所を有した地の法
⑤不動産に関する「遺言」について、その不動産の所在地法


したがって、在日外国人であれば、③または④に基づき、日本の法律(民法)による方式(自筆証書遺言・公正証書遺言等)で行うことが可能です。
ただし、後述いたしますが、「公正証書遺言」は、外国語ではなく日本語で作成しなければなりませんので、いくら日本方式で公正証書遺言を作成したいといっても、外国語の場合は日本の公証人は認めませんのでご注意ください。
「自筆証書遺言」は、日本語でも外国語(本国語)でも作成できます。

 ■2.遺言者が亡くなった場合の準拠法
相続については被相続人の本国法に従うものとされている(法の適用に関する通則法第36条)ため、在日外国人が日本の方式で遺言書を作成したとしても、相続については国籍を有する本国法に従うことになります。
なお、法の適用に関する通則法で「本国法による」として日本の法以外の法を適用する場合でも、その本国法が遺言の準拠法を行為地(遺言地)法と規定している場合は反致(はんち)と呼ばれ、日本の法が適用され、日本の民法に基づいて相続手続きをすることができます。。

■4.日本法方式による公正証書遺言の作成
在日外国人の方が日本の公正証書遺言の方式に従い遺言書を残す場合は次のとおりです。
(1)言語 日本語で作成される(公証人法27条)
(2)身元確認方法 印鑑登録証明書、本国政府発行の旅券、外国人登録証明(外国人住民票)等
(3)証人 2人必要
(4)遺言執行者 本国法に従う
(5)必要書類 遺言者と受遺者のつながりがわかる書面(例えば親が同一であることのわかるような書面)、その他財産の種類による

このように、在日外国人は日本の方式に従い遺言を残すことができますが、その法的有効性については本国法において相続や遺言についてどのように規定されているかによるため、本国法の調査が必要となります。

なお、日本との交流が頻繁な国の場合は比較的容易に調査が可能です。
例えば、韓国籍の方については反致により法律上有効に日本方式を用いて遺言書を残すことができます。

しかし、国によっては法律自体が整備されていないなど困難を伴うこともあります。