遺言作成と認知症

遺言を行うためには、遺言をする時において、その能力を有しなければならないとされています。
この能力は、自分の行う遺言が法律的にどのような効果を生じるかを理解する能力のことをいい、法律上「意思能力」ないし「遺言能力」とよばれています。

意思能力(遺言能力)の判断

遺言を行う意思能力があるか否かは、遺言時における本人の具体的状態に応じて判断されます。よって、認知症の人であるから必ず意思能力が認められないというわけでありません。
遺言を作成しようとする者の認知症の程度や理解力、遺言作成の動機や経緯、遺言によって生ずる法律効果の複雑性、遺言条項の複雑性等から総合的に判断して、遺言者が遺言条項及びその効果 成年被後見人、被保佐人、被補助人の場合 意思能力の程度によって、成年後見、保佐、補助という制度が整備され、本人保護の規定がおかれています。
そのような本人保護の制度の規定に従えば、遺言にあたっても成年後見人等の代理や同意を必要とすることになりそうですが、遺言は遺言者の最終意思を尊重する制度であるため、これらの規定の適用はなく、遺言者本人に意思能力(遺言能力)があるかどうかが問題となります。
ただし、成年被後見人が有効に遺言するためには、医師2人以上の立会いが必要とされています(民法937条)。